Everbody's Gone to The Rapture:美しい風景と切ない人間ドラマを垣間みたら感動がマッハ - ゲーム日記
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Everbody's Gone to The Rapture:美しい風景と切ない人間ドラマを垣間みたら感動がマッハ



”1984年6月6日午前6時37分
ヨートン、シュロップシャー

みんな、消失した。 この物語は、世界の終焉から始まる。

シュロップシャーの田園の奥深く、ヨートンの村から人気が消えた。遊び場にはおもちゃが置き去りにされ、静まり返った教会の墓地を隔離検疫のチラシが風に舞う。アップルトンの農場では、収穫を待つ作物がサラサラと風に揺れている。地面に落ちたままの鳥たち。

片付けられない洗濯物がだらりと垂れ下がり、奇妙な声が電波を乗っ取る。テレビのチャンネルはすべて砂嵐のノイズ映像だけ。そして、観測所の望遠鏡は、死んだ星と終わりなき闇に向けられていた。この村に残された誰かが、謎の解明に挑む。 ”


「ゲームは素晴らしいのにプレイヤーの足が遅くて死にそう!むしろ今すぐ死ぬ!」というレビューが誉れ高いこのゲーム、やるなら今しかないとたった一日の夏休みに思い切ってポチッてしまいました。

Everbody's Gone to The Rapture - PS Store
Everbody's Gone to The Rapture - Steam

自分的には足の遅さより3D酔いのほうがしんどかったのですが、「やれるのは今日しかない…!」という気合でもってエンディングまで到達したので、感動が冷めやらぬうちにレビューしとこう。



本作はオープンワールドのAVGです。
AVGといっても謎解き要素は一切なくて、何故か無人になってしまった村を彷徨い歩き、光の軌跡となってしまった住人の会話を聞いて、ここで起きた事件を考察する推理ゲーム。

どこまでも牧歌的で美しい風景の中を爺のような歩みで光の軌跡を追っていくだけ。ただそれだけなんですけど、光の輪郭で表現されるキャラクターたちが「過去そこに生きていた」というのを感じられるのがたいそう新鮮でした。



人間は一切登場しないわりに会話に出てくる登場人物が多くてはじめはわけがわからんちんなのですが、光の軌跡は主要人物の重要ログに案内してくれるので、基本的にそれを追いかけていればエンディングに到達できます。



せっかくだから軌跡を辿ることになる主要人物を紹介しておこう。
事件の核心に迫る人物はあとのほうに追いかける構造になっています。

ジェレミー・ウィーラー神父
村人たちに慕われている村の神父。村に蔓延する奇病により神への信仰心が揺らいでいる。よそ者としてウェンディーには嫌われているらしい。
錯乱したハワードに階段から突き落とされて骨折、ハワードが光となって消える様を目撃し、最後には自らも祈りながら光となって消滅。

ウェンディー
スティーブンの母であり、フランクの姉である頑固婆さん。
夫には先立たれていて、野鳥の世話を生きがいとしているが、その野鳥が大量死していることに気づき、村で起きている奇病との関連性を疑いはじめる。
スティーブンの妻ケイトのことはあまり良く思っておらず、以前の恋人であるリジーとくっつけたがっている。

フランク
スティーブンの叔父でウェンディーの弟。
妻メアリーには先立たれていて、そのころから日曜のミサに出席しなくなった。
飼っていた牛が大量死していて、やはり奇病との関連性を疑っている。
無線で街の外に救援を求めようとしたが、混線によりスティーブンのとある要請を聞いてしまい…。

リジー(エリザベス)・グレイブス
スティーブンの元恋人で、現浮気相手。夫は呑んだくれのロバート。
スティーブンの妻ケイトに負い目を感じながらも不倫をやめることができない様子。スティーブンから衝撃的な事実を聞かされ、駆け落ちを提案される。

スティーブン・アップルトン

この村出身の科学者。村で起きている奇病の原因について心あたりがある。
妻はアメリカ人の科学者ケイトだが、元恋人のリジーと浮気をしていて、かつ両者へ「愛している」などとほざくトンデモ男。
村で起きている問題を解決するべく、無線でとある要請をするが、その選択が誤りではないかとずっと悩んでもいる。

ケイト・コリンズ
スティーブンの妻で控えめに申し上げても天才科学者。
村で発生している奇病の原因について心当たりがあり、観測所に籠もってなにかをしようとしている。
村の中のラジオから流れてくるのはこの人の声。




プレイヤーができるのは、無人になった村を自由に探索し、「ラジオのスイッチを入れる」「電話にでる」「テレビをつける」「部屋の照明をつける」ことと、光の軌跡に働きかけて(コントローラーを傾けて)同調し、過去に起きた出来事を垣間見ること。



前述したように歩く速度がとにかく遅いこと、村の全体図を見たりコンパスなどのインターフェースが存在しない(!)こと、キャラクター描写が一切ないので、想像力をかき集めて断片情報から事件の全容を把握するしかないという恐ろしく不親切なゲームではありますが、とにかく風景が美しいので時間を忘れて没頭してしまいます。

【追記】
微妙ではありますが、R2ボタンを押しながら移動することで少しだけスピードアップします。



逆にいうと、まとまった時間がないと満足にプレイできずイライラだけが募るので、イライラしているときはやらないほうがいいかもしれません。
あと、一人称視点で歩きの上下動があるせいか、久々に3D酔いを起こしてしまいました。3Dゲームに弱い人はご注意を。

核心に近づくとBGMで盛り上げてきたり、風景が夜に変わったり(とにかく光の描写が美しい)という演出も心憎い。
フランクが村の高台でメアリーを看取れなかった後悔を語るシーンでは思わず泣いてしまいました。中年になると涙腺が緩くなってダメだ…。



「クリアできる気がしない!」という人のためにネタバレも書いておきます。
(以下反転すると読めます。追記あり)

ケイトとスティーブンが発見したのは、電波に乗って移動する知的生命体(みたいなもの)だったのではないでしょうか。

この知的生命体は地球の生命体とコンタクトをはかろうとしており、野鳥や牛の大量死はこれが原因でした。
スティーブンは伝染病のようなものと思い込んでいますが、ケイトは知的生命体がコンタクトをとろうとした結果、動物が死に至っていると仮定をたてます。

知的生命体波長のあった人間の脳に潜り込むのですが(スティーブンは誰が寄生されるのかパターンを見出そうと奔走している)、そうされた人間は眼の奥に腫瘍ができて激しい頭痛を起こし、鼻血を出すようになります。医師の残したメモによると、鮮血の塊の中には光の粒みたいなものが含まれているらしい。

腫瘍は数時間で成長して、しまいには意識を無くし、身体は光となって消滅してしまいます(現場に灰が残されることもある)。これが村人消失事件の真相。

そうやって消えた人間=光の軌跡なわけで、プレイヤーが追っているのはこれですね。

スティーブンはこの知的生命体が電波や電話網で感染を広げていることに気づき、村を隔離し、軍に空爆を要請します。
ただ、自分の子を身ごもっているリジーを巻き込む事はできないと、彼女にだけは村からの脱出ルートを教え、駆け落ちを持ちかけるのでした。(実際には待ち合わせ場所には現れず、責任をとって村に残る)リジーはそれを察して、ひとりで村を脱出したもようです。(追記:リジー篇でリジー本人&赤ん坊と思われる光球を追いかけることになるので、彼女も空爆で死んだ?)

実はスティーブンが力尽きる直前の回想がすべてを物語っています。

「昔、親父が傷ついたキツネを助けて、キツネも親父に懐くようになった。でも俺がキツネに近づいたら怯えたキツネが俺を噛んだ。親父は咄嗟にナタでキツネを殴り殺したが泣いていた。こいつにおまえを傷つける意図はなかったんだ、と。」

知的生命体には人間を害する意図はないんですが、融合しようすると人が人で無くなってしまうわけです。ああ、あの光は人だったんだ…と気づいたときの切なさといったら。

ケイトは知的生命体となんとかコンタクトをとろうと試みる過程でこれに気付いて、最後には自ら知的生命体を迎え入れ、光となって消えるのでした。

キリスト教の教えの通り「魂は不滅」とすると、じゃあ「死」の概念てなんだろう?ということに気づくのですが、邦題である「幸福な消失」というのは「消失して光となることで死を超越する存在となった」という意味なのかもしれません。

#キリスト教の終末観をゲーム化したそうですが(ゲーム内で聴ける歌も詩篇ですし)、「世界が滅びる数日前の物語」ってことは、つまり人類は光となって消えてしまうってオチなのか…。




いろんな解釈ができるように想像の余地を残した作りなってるんですよね。
他の感想ブログもいろいろ読みましたが、「光球は未来人説」「ゲームキャラだと気付いた住人が消えている説」など、いろいろありました。
だからこそ、村で断片的な情報を拾っていって、自分なりの結論に到達したときのカタルシスで感動がマッハだったわけです。
3D酔いで気持ち悪くなるし、光の軌跡をちょくちょく見失って「どこだああああー!」となることは度々あったけど、最後まで頑張って良かったよ…。



この話で思いだしたのが短編SF小説のこれ。

たったひとつの冴えたやりかた 改訳版
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
早川書房
売り上げランキング: 191,316

少女と異星人のファーストコンタクトを描いた切ない話で、このゲームに通じるものがあります。
こちらもオススメなので一緒にどうぞ。

【追記】
サントラ欲しいなーと思って調べていたら、PS Storeで販売していることがわかったぞー。これは買いだ!



コーラスとストリングスとピアノが全力で泣かせにくる名曲なんですが、いくつかの歌の歌詞が聖書からの引用だそうで。
一曲目の"All The Earth"の歌詞は、詩篇19篇と13篇のミックスになってます。

Their line is gone out through all the earth, and their words to the end of the world.
In them hath he set a tabernacle for the sun.

How long wilt thou forget me O Lord, forever?
How long wilt thou hide thy face from me?

その呼び声は全地に響き渡り、そのことばは地の果てまで届いた。
神はそこに、太陽のために、幕屋を設けられた。

主よ、いつまでわたしを忘れておられるのか。
いつまで、御顔をわたしから隠しておられるのか。


ゲームの雰囲気を知りたい人のための動画はこちら。
夫の死を悼む歌でしょうか。ウェンディー篇冒頭の曲が泣ける…。



I passed the day at the mourning tree,
Where the river's sorrows run deep
And all at once a host of birds
Did settle and nest around me

In their song, I heard your song
I heard the bomber's drone
beneath those birds and the swaying wheat
I heard you coming home

Oh my love where did you fly?
After you came home to me
Like the nightjar you left me here
To nest in the mourning tree


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